家族信託・遺言の基礎知識:相続でもめない準備
家族信託と遺言の違い、メリット・デメリット、費用相場を徹底解説。認知症対策・相続対策として元気なうちに準備すべき手順をまとめます。

家族信託・遺言の基礎知識:相続でもめない準備
「うちは財産が多くないから相続は関係ない」――そう思っていませんか?
実は、相続トラブルの3/4は遺産総額5,000万円以下で発生しています(家庭裁判所統計)。財産の多寡にかかわらず、元気なうちの準備が家族の絆を守ります。
本記事では、相続準備の代表的な2つの手段「家族信託」と「遺言」について、違い・費用・選び方を整理します。
- 家族信託と遺言の違い
- それぞれのメリット・デメリット
- 認知症対策としての家族信託
- 遺言の3つの種類と選び方
- 元気なうちにやるべき5ステップ
なぜ「相続準備」が必要なのか
相続トラブルの実態
| 遺産総額 | 調停件数の割合 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 約34% |
| 1,000〜5,000万円 | 約42% |
| 5,000万円〜1億円 | 約12% |
| 1億円超 | 約12% |
遺産が少ないほど、もめやすいのが現実です。
認知症リスク
認知症になると、本人の財産は実質「凍結」されます。
| 状態 | 預金引出 | 不動産売却 | 投資判断 |
|---|---|---|---|
| 健常 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 認知症(診断) | × | × | × |
| 成年後見人選任後 | △(家裁の許可) | △(家裁の許可) | △ |
成年後見制度には月2〜6万円の専門職後見人報酬が一生続くなど、デメリットが多いため、事前の家族信託が注目されています。
家族信託とは
基本の仕組み
家族信託は、信頼できる家族に財産の管理・処分を託す制度です。
| 役割 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 委託者 | 財産を託す人 | 親 |
| 受託者 | 託された人 | 子 |
| 受益者 | 利益を受ける人 | 親(兼ねる) |
例:父が自宅と預金を息子に託し、認知症になっても息子が父のために売却・運用できるようにする。
家族信託でできること
認知症対策
判断能力低下後も管理可能
柔軟な承継
孫への承継も指定可能
不動産対応
認知症後も家を売れる
家族信託の費用
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 専門家報酬(弁護士・司法書士) | 信託財産の0.5〜1% |
| 信託契約書(公正証書化) | 5〜10万円 |
| 不動産の信託登記 | 固定資産税評価額の0.3〜0.4% |
| 合計目安(5,000万円の財産) | 30〜70万円 |
遺言とは
基本の仕組み
遺言は、自分の死後の財産分配を指定する法的文書です。
遺言の3つの種類
| 種類 | 作成方法 | 費用 | 安全性 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 自分で手書き | 0円 | △ |
| 公正証書遺言 | 公証人作成 | 5〜10万円 | ◎ |
| 秘密証書遺言 | 自分で作成、公証役場で保管 | 1.1万円 | ○ |
自筆証書遺言の要件(2020年改正)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 全文自筆 | パソコン不可(財産目録は除く) |
| 日付 | 年月日を明記 |
| 氏名 | 自筆署名 |
| 押印 | 実印推奨 |
| 訂正方法 | 厳格なルールあり |
2020年から法務局での保管制度が始まり、自筆証書遺言の利便性が向上しました。
| 保管制度のメリット | 内容 |
|---|---|
| 紛失防止 | 法務局が保管 |
| 改ざん防止 | 第三者の介入排除 |
| 検認不要 | 開封時の家裁手続き不要 |
公正証書遺言が最も確実
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 法的有効性 | 公証人が確認、無効になりにくい |
| 紛失なし | 公証役場で原本保管 |
| 検認不要 | 死後すぐに執行可能 |
| 文字が書けなくても可 | 公証人が口述筆記 |
家族信託と遺言の比較
両者の違いを一覧で
| 項目 | 家族信託 | 遺言 |
|---|---|---|
| 効力発生 | 契約締結時 | 死亡時 |
| 認知症対策 | できる | できない |
| 二次相続指定 | できる | 一代限り |
| 費用 | 30〜100万円 | 5〜10万円 |
| 手続き | 契約・登記 | 文書作成 |
| 取消し | 契約変更可 | いつでも書き換え可 |
使い分けの目安
| 状況 | 推奨 |
|---|---|
| 認知症リスクが心配 | 家族信託 |
| 不動産を確実に承継したい | 家族信託+遺言 |
| シンプルに分配だけ決めたい | 遺言 |
| 二次相続まで決めたい(孫への承継) | 家族信託 |
| 障害のある子の生活費を確保したい | 家族信託 |
元気なうちにやるべき5ステップ
ステップ1:財産の棚卸し
プラスとマイナスの財産を全て書き出す
不動産、預金、有価証券、保険、ローン、連帯保証など、すべてを一覧化します。エンディングノートを活用すると整理しやすいです。
| カテゴリ | 例 |
|---|---|
| プラス財産 | 不動産、預金、株式、投信、保険、貴金属 |
| マイナス財産 | 住宅ローン、その他借入、連帯保証 |
| みなし相続財産 | 死亡保険金、死亡退職金 |
ステップ2:相続税の試算
基礎控除を超えるか確認
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。
| 法定相続人 | 基礎控除 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
これを超える資産がある場合、相続税の対策が必要です。
ステップ3:家族会議
希望と懸念を共有
親の希望、子の事情を率直に話し合います。**もめる相続の多くは「親の意思を子が知らない」**ことが原因です。
ステップ4:遺言・信託の作成
専門家と相談しながら作成
弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、専門家のサポートを受けます。
| 専門家 | 得意分野 |
|---|---|
| 弁護士 | トラブル予防・解決 |
| 司法書士 | 登記、家族信託 |
| 税理士 | 相続税対策 |
| 行政書士 | 遺言書作成 |
ステップ5:定期的な見直し
3〜5年ごとに見直す
家族構成や財産状況が変われば、内容も見直しが必要です。
知っておきたい税制と特例
相続税の主な特例
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者は1.6億円または法定相続分まで非課税 |
| 小規模宅地等の特例 | 自宅・事業用地の評価額を最大80%減 |
| 生命保険金の非課税枠 | 500万円×法定相続人数 |
| 死亡退職金の非課税枠 | 500万円×法定相続人数 |
生前贈与の活用
| 制度 | 非課税枠 |
|---|---|
| 暦年贈与 | 年110万円 |
| 教育資金一括贈与 | 1,500万円(30歳まで) |
| 結婚・子育て資金贈与 | 1,000万円 |
| 住宅取得資金贈与 | 1,000万円(条件あり) |
相続開始前の贈与は、従来3年分が相続財産に加算されていましたが、2024年から段階的に7年に延長されました。早めの贈与計画が重要です。
よくあるトラブル事例
ケース1:自宅一つの「分けられない遺産」
| 相続人 | 希望 |
|---|---|
| 長男(同居) | 自宅を相続したい |
| 次男(別居) | 売却して現金で分けたい |
遺言と代償分割で対応可能。長男が自宅を取得し、次男に現金を支払う形にできます。
ケース2:認知症の親の不動産売却
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 家族信託あり | 受託者(子)が売却可能 |
| 家族信託なし | 成年後見制度→家裁の許可が必要 |
ケース3:海外在住の相続人
国際相続は手続きが複雑化します。生前に弁護士に相談して対策を立てておくことが重要です。
まとめ
- 遺産が少なくてももめることが多い、準備は必須
- 認知症リスクには家族信託が有効
- 遺言は公正証書が最も確実
- 家族信託と遺言は併用が理想
- 元気なうちに家族会議と専門家相談を
相続は「亡くなってから考える」ものではなく、「生きているうちに準備する」ものです。家族信託や遺言は、自分のためではなく残される家族のための準備。本記事をきっかけに、家族で話し合う時間を作ってみてください。
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免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・税務手続きについては弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。