退職前後5年でやるべき資産整理チェックリスト
退職前2年・退職時・退職後3年で必ず確認すべき資産整理項目を時系列で解説。退職金の受け取り方、年金繰下げ、健康保険の選択まで網羅します。

退職前後5年でやるべき資産整理チェックリスト
退職は人生最大の「お金の節目」です。退職前2年・退職時・退職後3年の合計5年間で何をすべきかを把握できているかどうかで、生涯の手取り額が数百万円単位で変わります。
本記事では、退職前後5年間にやるべき資産整理を時系列のチェックリストとして整理します。
- 退職前2年〜退職後3年の時系列やることリスト
- 退職金の受け取り方(一時金 vs 年金)の判断基準
- 健康保険の3つの選択肢と年間負担差
- 年金繰下げ・繰上げの損益分岐
- iDeCo・新NISAの「出口戦略」
なぜ「5年」で整理するのか
退職時の意思決定は、取り消しがきかないものが多いのが特徴です。
| 項目 | 取り消し可否 | 影響期間 |
|---|---|---|
| 退職金の受取方法 | 不可 | 一生 |
| 公的年金の受給開始時期 | 一度きり | 一生 |
| 健康保険の選択 | 期限あり | 2年間 |
| iDeCoの受給方法 | 不可 | 一生 |
事前に5年かけて検討すれば、最適な選択ができます。
退職前2年:情報収集と整理フェーズ
チェック1:退職金額と受取方法の確認
会社の退職金規程を取り寄せる
人事部に退職金規程と退職金見込額の試算書を請求します。多くの企業では一時金・年金(退職年金)・併用の3つから選べます。
| 受取方法 | 税制優遇 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得控除 | 一括で受取、節税効果大 |
| 年金(分割) | 公的年金等控除 | 毎年分割、運用効果あり |
| 併用 | 両方適用 | バランス型 |
チェック2:退職所得控除の確認
退職所得控除は勤続年数で決まります。
| 勤続年数 | 控除額計算式 | 例(控除額) |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 | 15年→600万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数−20) | 35年→1,850万円 |
例:勤続35年・退職金2,500万円の場合
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 退職金 | 2,500万円 |
| 退職所得控除 | 1,850万円 |
| 課税対象(×1/2) | 325万円 |
| 所得税・住民税合計 | 約56万円 |
| 手取り | 約2,444万円 |
チェック3:iDeCoの受給計画
iDeCoは60歳以降、一時金・年金・併用で受け取れます。退職金との受取時期の調整が節税のカギです。
退職金とiDeCoを同じ年に一時金で受け取ると、退職所得控除を1回しか使えないため税金が増えます。
- 会社退職金を先に受け取る場合:iDeCoは20年以上空ける
- iDeCoを先に受け取る場合:退職金は4年以上空ける
チェック4:保有資産の棚卸し
退職2年前は、資産の全体像を可視化する絶好のタイミングです。
| カテゴリ | 確認項目 |
|---|---|
| 預貯金 | 銀行・口座ごとの残高 |
| 投資 | 新NISA、特定口座、iDeCo、企業型DC |
| 保険 | 解約返戻金、満期金 |
| 不動産 | 評価額、ローン残高 |
| 負債 | 住宅ローン、その他借入 |
退職前1年:実行準備フェーズ
チェック5:年金見込額の取得
「ねんきん定期便」またはねんきんネットで老齢年金の見込額を確認します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 老齢基礎年金 | 国民年金から(満額約81万円/年) |
| 老齢厚生年金 | 厚生年金から(人による) |
| 加給年金 | 配偶者がいる場合の加算 |
| 在職老齢年金 | 働きながら受給する場合の調整 |
チェック6:健康保険の選択
退職後の健康保険は3択です。
| 選択肢 | 期間 | 保険料目安 |
|---|---|---|
| 任意継続(協会けんぽ等) | 最長2年 | 在職時の約2倍 |
| 国民健康保険 | 制限なし | 前年所得で算定 |
| 家族の被扶養者 | 制限なし | 0円 |
- 退職翌年の収入が少なくなる場合:国民健康保険が有利になることが多い
- 配偶者が会社員で年収130万円未満になる:被扶養者が最有利
- 退職直後は任意継続、翌年から国保に切り替えも可
チェック7:失業保険(基本手当)
| 区分 | 給付日数 | 給付率 |
|---|---|---|
| 自己都合・60〜64歳 | 90〜150日 | 賃金の約50〜80% |
| 会社都合・60〜64歳 | 90〜240日 | 賃金の約50〜80% |
| 65歳以上 | 高年齢求職者給付金(一時金) | 30〜50日分 |
64歳11ヶ月で退職するか、65歳到達後で退職するかで給付額が大きく異なるため、退職日の調整は重要です。
退職時:手続きラッシュ
チェック8:会社での手続き
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 退職届の提出 | 1〜3ヶ月前 |
| 健康保険証の返却 | 退職日 |
| 退職金の受給手続き | 退職日前後 |
| 企業型DCの移換手続き | 6ヶ月以内 |
| 源泉徴収票の受領 | 退職後1ヶ月以内 |
チェック9:企業型DCの移換
企業型DCに加入していた場合、退職後6ヶ月以内にiDeCoまたは新しい会社の企業型DCへ移換が必要です。
6ヶ月を過ぎると国民年金基金連合会に自動移換され、運用されないまま管理手数料だけ取られます。必ず期限内に手続きしましょう。
チェック10:住民税の納付
住民税は前年の所得にかかります。退職翌年は無収入でも、前年分の住民税の納付書が届くため、現金を確保しておきます。
| 退職時期 | 住民税の徴収 |
|---|---|
| 1〜5月退職 | 残額を最終給与から一括徴収 |
| 6〜12月退職 | 自分で納付(普通徴収)に切替 |
退職後1年:新生活立ち上げ
チェック11:年金請求の手続き
老齢年金は自分で請求しないともらえません。65歳の誕生月の3ヶ月前に「年金請求書」が届きます。
チェック12:年金繰下げの検討
年金は60〜75歳の間で受給開始時期を選べます。
| 受給開始年齢 | 年金額(65歳=100%) |
|---|---|
| 60歳 | 76%(24%減) |
| 65歳 | 100%(標準) |
| 70歳 | 142%(42%増) |
| 75歳 | 184%(84%増) |
- 70歳まで繰下げの損益分岐:81歳前後
- 75歳まで繰下げの損益分岐:86歳前後
- 健康状態と他の収入源を考慮して判断を
チェック13:確定申告
退職した年は、年末調整がされていない場合が多いため、確定申告で還付を受けられることがあります。
退職後2〜3年:資産運用の最適化
チェック14:取り崩しルールの確立
退職後の資産運用は「増やす」から「減らさず使う」への転換が必要です。
| 取り崩し方法 | 内容 | 適性 |
|---|---|---|
| 定額取崩 | 毎月◯万円 | 生活費が一定 |
| 定率取崩 | 残高の◯%を毎年 | 資産寿命を伸ばす |
| バケット戦略 | 短期・中期・長期で分ける | リスク管理重視 |
チェック15:相続準備
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遺言書 | 公正証書遺言の作成 |
| 生命保険 | 受取人の確認・変更 |
| エンディングノート | 資産・パスワード・希望の整理 |
| 家族信託 | 認知症対策 |
全体スケジュールまとめ
| 時期 | 主なタスク |
|---|---|
| 退職2年前 | 退職金規程確認、資産棚卸し |
| 退職1年前 | 年金見込額確認、健康保険検討 |
| 退職時 | 各種手続き、企業型DC移換 |
| 退職翌年 | 住民税納付、確定申告 |
| 退職2年目 | 健康保険切替検討、運用見直し |
| 退職3年目 | 取り崩しルール確立、相続準備 |
退職金税優遇
勤続35年の控除額
繰下げ最大
75歳開始で年金1.84倍
DC移換期限
自動移換を避ける
まとめ
- 退職前2年で退職金額・iDeCoの出口戦略を決める
- 退職前1年で年金見込額・健康保険を検討
- 退職時は企業型DC移換と住民税対応が最優先
- 退職後1年で年金請求と繰下げ判断
- 退職後2〜3年で取り崩しルールと相続準備
退職は「ゴール」ではなく「人生後半戦のスタート」です。5年間かけて段階的に整理することで、安心して新しい生活を迎えられます。退職予定日が決まったら、本記事のチェックリストをカレンダーに落とし込んでみてください。
関連記事
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・社会保険手続きについては税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。