確定申告で損益通算する方法:投資の損失を節税に活かす
投資で損失が出た時に確定申告で損益通算する方法を解説。具体的な手順、繰越控除の仕組み、注意点をわかりやすく紹介します。

確定申告で損益通算する方法
投資をしていると、すべてが利益になるわけではありません。損失が出ることもあります。
しかし、損失は確定申告の損益通算を使えば、税金を取り戻すチャンスに変えられます。知っているか知らないかで、数万円〜数十万円の差がつくこともあります。
- 損益通算の仕組みと対象範囲
- 具体的な確定申告の手順
- 繰越控除で3年間損失を活用する方法
- 損益通算できないケースと注意点
損益通算とは
基本の仕組み
損益通算とは、投資で出た利益と損失を相殺して、税金を減らす仕組みです。
| 口座A | 口座B | 損益通算 | 税金への影響 |
|---|---|---|---|
| +100万円 | -60万円 | +40万円 | 税金が約12万円減る |
| +50万円 | -50万円 | 0円 | 税金ゼロ |
| +30万円 | -80万円 | -50万円 | 税金ゼロ+繰越可能 |
なぜ損益通算するとお得なのか
特定口座(源泉徴収あり)では、利益が出ると自動的に約20%の税金が徴収されます。
| 状況 | 税金 |
|---|---|
| A口座で100万円の利益 | 約20万円徴収済み |
| B口座で60万円の損失 | — |
| 損益通算後 | 差引利益40万円 → 税金約8万円 |
| 還付額 | 約12万円が戻ってくる |
源泉徴収で払い過ぎた税金が、確定申告で還付されます。手続きしないとお金は戻ってきません。
損益通算できるもの・できないもの
通算可能な組み合わせ
| 利益 | 損失 | 通算 |
|---|---|---|
| 株式の売却益 | 株式の売却損 | 可能 |
| 投資信託の売却益 | 投資信託の売却損 | 可能 |
| 株式の配当金 | 株式の売却損 | 可能 |
| ETFの分配金 | ETFの売却損 | 可能 |
通算できないケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| NISA口座の損失 | 損益通算の対象外 |
| 暗号資産の損失 | 株式等の所得と通算不可(雑所得) |
| FXの損失 | 先物取引等の所得で別区分 |
| 不動産の損失 | 株式等の所得と通算不可 |
| 給与所得との通算 | 株式等の損失は給与所得と通算不可 |
NISA口座で出た損失は、特定口座の利益と損益通算できません。NISAでは損失がなかったものとして扱われます。
損益通算の具体的な手順
同一証券会社の場合
同じ証券会社内の特定口座(源泉徴収あり)であれば、自動的に損益通算されます。確定申告は不要です。
| 条件 | 対応 |
|---|---|
| 同一証券会社の特定口座 | 自動で損益通算(申告不要) |
| 複数の証券会社 | 確定申告が必要 |
複数証券会社の場合の手順
年間取引報告書を集める
すべての証券会社から届く「年間取引報告書」(特定口座年間取引報告書)を準備します。1月中旬〜2月初旬に届きます。
確定申告書等作成コーナーにアクセス
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)にアクセスします。
株式等の譲渡所得等を入力
「株式等の譲渡所得等」の項目で、各証券会社の年間取引報告書の数字を入力します。
配当所得を入力(配当金と通算する場合)
配当金と売却損を通算する場合は、配当所得も「申告分離課税」で申告します。
申告書を提出
e-Taxで電子送信するか、印刷して税務署に提出します。
還付金を受け取る
申告から1〜2ヶ月で指定口座に還付金が振り込まれます。
繰越控除:損失を3年間持ち越す
繰越控除とは
損失が利益を上回った場合、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越し、将来の利益と相殺できます。
繰越控除のシミュレーション
| 年 | その年の損益 | 繰越損失 | 課税対象 | 税金 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | -200万円 | -200万円 | 0円 | 0円 |
| 2年目 | +80万円 | -120万円 | 0円 | 0円 |
| 3年目 | +80万円 | -40万円 | 0円 | 0円 |
| 4年目 | +80万円 | 0円 | 40万円 | 約8万円 |
繰越控除がなければ、2〜4年目で合計約48万円の税金がかかるところ、繰越控除により約8万円で済みます。節税額は約40万円です。
繰越控除を受けるには、損失が出た年も含めて毎年確定申告が必要です。利益がゼロの年でも申告を忘れないでください。申告をしないと繰越控除の権利を失います。
配当金との損益通算
配当金で税金を取り戻す
売却損がある場合、配当金と損益通算することで、配当金にかかった税金を取り戻せます。
| 状況 | 金額 |
|---|---|
| 株式の売却損 | -30万円 |
| 配当金(税引前) | +20万円 |
| 配当金にかかった税金 | 約4万円(源泉徴収済み) |
| 損益通算後 | -10万円(課税対象ゼロ) |
| 還付額 | 約4万円 |
申告方法の選択
配当金の申告方法は2つあり、損益通算するには申告分離課税を選びます。
| 申告方法 | 損益通算 | 特徴 |
|---|---|---|
| 申告分離課税 | 可能 | 税率20.315%固定 |
| 総合課税 | 不可 | 配当控除が使える(高所得者は不利) |
| 申告不要(源泉徴収のまま) | 不可 | 手間なし |
よくある質問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり)で申告は必要? | 複数口座で通算する場合のみ必要 |
| 確定申告を忘れた場合は? | 5年以内なら「更正の請求」で還付可能 |
| NISA口座の損失は通算できる? | できません |
| 損失を繰り越すだけでも申告が必要? | はい、毎年申告が必要 |
| 利益がゼロでも繰越控除の申告は必要? | はい、申告しないと繰越が途切れる |
| 配偶者の特定口座と通算できる? | できません。通算は本人の口座のみ |
損益通算の活用テクニック
テクニック1:年末の「損出し」
年末に含み損のある銘柄を売却して損失を確定させ、利益と通算する方法です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 12月中旬 | 含み損のある銘柄を売却 |
| 損失確定 | その年の利益と損益通算 |
| 翌営業日以降 | 同じ銘柄を買い戻す(任意) |
同日に同じ銘柄を売却・購入すると、税務上の取得単価が変わり、意図した節税効果が得られない場合があります。買い戻す場合は翌営業日以降に。
テクニック2:配当金との自動通算
同じ証券会社の特定口座内であれば、売却損と配当金の損益通算は年末に自動的に行われ、源泉徴収された税金が口座に還付されます。
まとめ
- 複数口座の損益は確定申告で通算できる
- 損失は3年間繰り越せる(毎年申告が条件)
- 配当金とも通算可能で税金が戻る場合がある
投資で損失が出た時こそ、確定申告の出番です。損益通算を活用すれば、損失を節税に変えることができます。
「面倒だから」と放置すると、取り戻せるはずの税金を逃してしまいます。年間取引報告書が届いたら、損益通算の対象になるかチェックしましょう。
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免責事項: この記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスではありません。具体的な税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。